世の中のことについて考えた

83年生まれ、女性。元新聞記者、精神保健福祉士、その他。そんな私の硬と軟。

「障害児の施設退所後の行き先に自立援助ホーム」とはどういうことか

この記事が、検索したらハフポストのサイトにあってびっくり。こんな地味なニュース・・・と思ったら、福祉新聞がハフポストに提供しているようだ。

自立援助ホーム、というのは、家庭環境が悪かったり親がいないなど、児童養護施設に行く要件を満たすような子どもの中で、高校に進学しなかったり中退したり、卒業したが住むところがなかったり、一人暮らしする自信がなかったり・・・というような事情の15~19歳の子供が共同生活をするところ。基本的に、働きに行く。順調に働くことができたり、お金がたまったりしたのちに、もしくは19歳を迎えると、卒業する。家賃や食費は数万円かかるので、自分で働いて払うことが前提。

そんな自立援助ホームは、数が少ないこともあり(県内に1か所程度のところも)、認知度は低いが、それがニュースになっていた。しかも、日本知的障害者福祉協会が発信したものとして。

障害児の施設退所後の行き先に「自立援助ホーム」創設を 日本知的障害者福祉協会

提言の背景にあるのは、18歳を過ぎても障害児施設にいる「加齢児」の存在。

厚生労働省は8日、障害児入所施設の在り方に関する検討会(座長=柏女霊峰・淑徳大教授)を開き、関係6団体からヒアリングした。その一つ、日本知的障害者福祉協会は、障害児施設を退所した後の行き先として「自立援助ホーム」の創設を提言した。
自立援助ホームは義務教育終了後の15歳から原則20歳未満の、親と暮らせない人が暮らす場で、児童福祉法に位置付けられている。現在、164カ所ある。同協会はそれとは別に、障害児に限定して22歳まで暮らすことのできるホームとしたい考えだ。

また、障害児施設に入所する段階から、措置権限を持つ児童相談所、18歳以上の障害者へのサービス支給決定権を持つ市町村などが施設退所後を見据えて話し合う仕組みをつくるよう要望した。
提言の背景には、18歳を過ぎても障害児施設にいる「加齢児」の存在がある。知的障害児施設で暮らす子どもの7割は行政の措置による。家庭で虐待されたことなどが理由だ。
そうした子どもが退所後の生活基盤を整えるには行政の関与が不可欠だが、現在は児童の制度から障害者の制度につなぐ仕組みが法的に担保されていない。その調整は施設の努力に負う現実があり、同協会はそれを改めたい考えだ。
協会が提言する自立援助ホームはこうした話し合いのシステムを構築した上で、アパート暮らしやグループホームに移る手前の通過型の施設として、少人数での共同生活に慣れることを想定する。
同協会は、5年前の厚労省検討会でも同様の提言をしたが、社会的養護の分野で制度改革が進んだことも踏まえ、再提言した。
親と暮らせない事情のある子どもの育ちを保障する社会的養護の分野では、障害のある子どもが増加。児童養護施設などは生活単位の小規模化が進められている。検討会は今年2月に発足し、12月をめどに報告書をまとめる。
(2019年5月22日福祉新聞より転載)

 

 前に、ブログにこんなことを書いたことがある。 
すでに、自立援助ホームに、障害のある子どもたちは進んでいる。それを、障害のある子限定の自立援助ホームにしたほうがよいのか、それはよくわからない。ただ、「アパート暮らしやグループホームに移る手前の通過型の施設として」という目的は理解できる。というのは、グループホームでは就労を支援する体制がないからだ。否、「就労をする生活」を支援できない。グループホームから、たとえば就労移行支援などに通ったとしても、日常生活の中で、仕事をする意識を持ってもらうには、確かに自立援助ホームのほうがやりやすいだろう。グループホームは、一般就労を目指す人も少ないし、作業所に通うだけの、ゆったりした生活スペースを何十年も続けている人が多いからだ。

一方で疑問なのは、私の理解では、障害児入所施設には重度障害の子どもが入所している場合が多い。一般就労を目指せるケースは少ないのではないか。そうであれば、グループホームをもっと作って、そこに進み、就労継続支援の事業所へ通うことを支援すると考えるほうがスムーズではないか。

・・・厚労省の検討会に出されたこの協会の資料を見ると、

https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000506292.pdf

想像以上に「加齢児」の割合が多く(30歳以上が入所者の8割以上)、彼らはおそらく重度の方が多いが、新たに入所している少数の児童については、就労につなげられる子も多い、ということなのだろう。検討会の議論は、また今後も見ていくことにしたい。